魅力あふれる希少超長綿「スビンコットン」の現在と未来

魅力あふれる希少超長綿「スビンコットン」の現在と未来

世の中にはいくつかの希少繊維と呼ばれるものがあります。それは、ただ数が少ないから珍しいというわけではなく、私たちの生活により良い心地や快適さをもたらせてくれるもの。だからこそ、種を絶やさぬように魅力を伝え続けている人たちがいます。


+CLOTHETが製品を通じてその価値を発信している「スビンコットン」もその一つ。とても素晴らしい繊維ながら、生産量が圧倒的に少なく生育が難しいと言われています。


今回、長年スビンコットンの持続可能性を追求する活動を続けている専門家の方をお招きし、生育現場の現状や他の繊維と比較した魅力についてのお話を伺いました。


Interview:Toshio Okada(+CLOTHET)
Edit:K-suke Matsuda(RECKLESS)


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※スビンプラチナムは希少なスビンの中でも特に最高品質を誇る“ファーストピック(初摘み)”のみを糸にしたものです。

【スビンコットンの現在】
繊維の魅力と生育リスクは表裏一体

__スビンコットンは希少繊維と言われていますが、栽培しにくいということが要因なのでしょうか?


そうですね。スビンコットンは一般的な綿花よりも生育期間が長いことで、細く長く強い繊維が生まれます。ただし、その一方で生育期間が長いということは災害に遭う可能性が高いということでもあります。つまり、綿花ができあがる前にダメになってしまうリスクが伴うということです。


また、スビンコットンは生育条件もかなり厳しいです。ある程度の高原で、山から降りてくる清涼な風があり、夏は暑くて水が豊富な場所となると、南インドの一部地域でしか育てることができません。

インド自体が昨今の気象大変動により、大干ばつやサイクロンなどが年に数回必ず発生するので、時期によっては根こそぎダメにされてしまうこともありますし、長雨と洪水で綿花が育たなくなってしまうことも少なくはありません。

綿花畑

__綿花農家の方々は、そういった災害に備えてどのように対策をされているのですか?


スビンコットンだけではあまりにもリスクが高いので、必ずその畑の周辺に生育期間の短いトマトやウコン、仏花などを植えてリスクヘッジをしています。そういった作物は短期間で換金することができますので、彼らの生活のライフラインになっているというわけです。


正直に言ってしまえば、農家の方々はリスクの高いスビンコットンなんて作りたくないはずなんです。それでも作ってくださっているのは、私たちのように、魅力的な繊維を維持したいと思う人たちの期待に応えてくれているからだと思います。そういったことのバランスを取りながら、やっと年間で200トンばかりのスビンコットンを流通しています。

【スビンコットンの希少性】
超長綿全体のわずか0,05%

__いわゆる希少なコットンと言うと「シーアイランドコットン」や「ギザコットン」など、他の種類もありますが、スビンコットンはその中でも希少性は高いのでしょうか?


単純な数量の話であれば、一番希少性が高いのは「海島綿」で、カリブ海にあるバルバドス島で取れた「バルバドス産シーアイランドコットン」のことを指します。シーアイランドコットンは年間で30トン程度と言われていますし、限られた生産者しか取ることができないようです。


また、「ギザコットン」に関しては、「ギザ45」という種類が有名だと思いますが、これも非常に不安定な生産状況にありますので、今やマーケットで自由に売買できる商品とは言えません。

それらを考えると、市場にしっかり出回っているコットンという意味での希少性では、スビンコットンが一番希少なのではないでしょうか。

綿花

__先ほど200トンとおっしゃっていましたが、市場に流通している他の超長綿と比較して、どのくらい生産量が違うのでしょうか?


全世界の年間綿花生産量が約2600万トンで、超長綿はその内の約39万トン。つまり、すべてのコットンの中で1.5%程度しかありません。


その超長綿の中で一番多いのが、アメリカの「スーピマコットン」で約15万トン。次いでインドの「DCHコットン」が約7万5000トン。中国の「新疆超長綿」が6万トン、エジプトの「ギザ92」と「ギザ96」を合わせて3300トン。これに対してスビンコットンはわずか200トンです。


スビンコットンのピークは1989年から1990年にかけてなのですが、当時は6,000トンくらいまで取れていたそうです。15年前にはすでに300トンまで生産量が落ちており、今は200トンを維持しているという状況です。

【スビンコットンの魅力】
カットソーに適した世界最高峰の繊維質

__スビンコットンの魅力について、改めて教えていただけますか?


スビンコットンの特徴は繊維質が細くて長くて強いことです。繊維の細さを測る時に「マイクロ(ミリグラムパーインチ)」という単位で表すことがあるのですが、たとえば、スーピマコットンで約4.1、ギザ45コットンで約3.1程度なのに対して、スビン(ファーストピック)は2.9という数値が出ています。つまり、非常に細いということですね。


なぜ繊維が細い方が良いのかと言えば、1本の糸を作る時には必ず「繊維の必要な構成本数」というものが出てきます。スーピマコットンが4.1で、スビンコットンが2.9ということは、同じ糸を作る時にスビンコットンの場合はおよそ1.5倍の繊維でできているということです。だからこそ、糸に撚り(複数の繊維をねじり合わせること)をかけなくても強さが出ます。

綿花2

__甘く撚っても糸として成立するので、やわらかい糸に仕上げることができるということですね。


そうですね。やわらかい糸で生地を仕立てれば当然やわらかい質感になるので、カットソーとの相性が良いというわけです。+CLOTHETで使われている糸には、大人らしい綺麗な表情にするために少し強めの撚りをかけていると思いますが、それでも他の繊維と比べて撚りを強くする必要はないので、気持ちの良いやわらかさを維持しながら上品な質感に仕上げることができます。


これは余談ですが、イタリアの老舗シャツ地メーカーの方々からは「スビンコットンはカットソー向けの世界最高峰の綿だ」とよく言われます。生育が難しく生産量を増やすこともできないのですが、そのくらい自信を持っておすすめできる繊維ですので、ぜひ多くの方に魅力を体感していただきたいと思っています。

【ファーストピックの魅力】
純度が高い最高品質のスビンコットン

__スビンコットンの中には、ファーストピック(初摘み)の「スビンプラチナム」がありますよね。ファースト以降のピック分とはどんな部分に違いがあるのでしょうか?


以前はファースト、セカンド、サードくらいまで分かれていたのですが、今ではファーストとセカンドだけになってきています。それらの違いを分かりやすく言えば、ファーストは100%スビンコットンだということがはっきり分かるということです。つまり、純度が高いので品質も高いということですね。


たとえば、昨年の収穫では200トンのうち130トンがファーストピック分でした。計算的には、残りの70トンがセカンドピックになるはずなのですが、工場の方に聞くと最終的には、その数倍を出荷したと言うんですね。

コットンを収穫

__70トンが数倍にカサ増しされているということですね。


どういうことかと言えば、綿摘み(ピッキング)の最終局面ではいろんなグレードのものが混ざってしまっているということなんです。しかし、それもすべて「スビンコットン」です。農家の皆さんが手塩にかけて大切に育て上げた究極のコットンだということに変わりはありません。


だからこそ、ファーストピックオンリーの「スビンプラチナム」にはできるだけ素材が持つ力を最大限発揮できるようにし、ノーマルなスビンコットンの方も加工仕上げを研究することで遜色ない風合いを目指して開発しています。


このように、あらゆるグレードのスビンコットンを多方面からのアプローチでお客様にお届けし、そのクオリティの高さを実感いただくのが大切だと思います。ほぼ無名に近い絶滅の危機に瀕した希少コットンの認知度を上げること、そして、その価値に見合った価格で安定的に購入し続けることが、スビンコットンを守ることに繋がると信じています。


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【スビンコットンの未来】
持続可能性の追求とブレンド素材の開発

__スビンコットンは今後どのようになっていくのでしょうか?


まず目指すべきは、とにかく種として生きながらえることだと思います。いつも「究極のサステナビリティを追い求めている」と言っているのですが、私はスビンという種のことを大切に想っているので、これからもインドの紡績会社さんと組んでクオリティの高いスビンコットン作りを維持していきたいです。

綿花3

また、スビンコットン自体のクオリティをキープする一方で、スビンコットン自体の魅力を伝えるために新しいアプローチを考えることも大切だと思います。たとえば、私は定期的にクオリティの高いレベルでブレンドをすることにも挑戦しています。スビンコットンの落ち綿をブレンドしてムラ糸を作ってみたり、あまり上手くはいきませんでしたがスビンコットンとシルクを混紡したものを実験的に作ったこともあります。


スビンコットンがこれからも継続していくためには、多くの方々に愛される素材にならなければいけません。ぜひ、+CLOTHETのお客様にも、この素晴らしい繊維を実際に体感してファンになっていただけたら嬉しいです。

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