⽇本の誇る⽑織物産地「尾州」を先導する
テキスタイルメーカー、中伝⽑織。

2019 秋冬シーズンを飾るプロダクトでもある、ウールフランネルのセットアップ。「Flannelana(フランネラーナ)」と呼ばれるその⽣地は、オーストラリアで飼育された⽺から採取されたファインウール原料を、⾼密度に織り上げたこだわりの仕上がりだ。

⼿がけたのは、世界⼆⼤⽑織物産地・尾州地域に居を構える、創業60 年の⽼舗テキスタイルメーカー「中伝⽑織株式会社(以降、「中伝⽑織」)」。その⼯場を訪れ、常務取締役を務める中島啓介⽒に尾州地域の歴史とモノづくりの特⾊を伺った。

世界⼆⼤⽑織物産地「尾州」の歴史と背景

「触ってごらん、ウールだよ。」という情緒的なコピーを乗せたCM が話題となった1970年代後半。その当時から⾼級天然繊維「ウール」はファッションに⽋かせない存在であった。しかし、その何⼗年も前から世界的にウールの需要は増していたのだそう。現代の化学繊維に劣らないほど素晴らしい機能性を持つその原料は、⼆度の世界⼤戦時に軍服や作業着の⽣地として重宝されていたからだ。

そんな背景の中、政府から軍需産業として⽑織物の⽣産を受け、現在では世界⼆⼤⽑織物産地の⼀つとなった「尾州」。愛知県の西部と岐⾩県の⼀部にまたがる地域だ。その織物産業の歴史はなかなか古い。
「この地域は今でこそ⽑織物の産地ですが、明治時代の終わりには綿織物の⽣産量で⽇本⼀になったことがあります。その当時から織物産業に傾倒しており、第⼀次世界⼤戦が終わった頃から、軍需を受けて⽑織物産業にシフトしていったそうです。今や⽑織物は、イギリスのハダーズフィールドが衰退したことで⼆⼤産地と呼ばれるようになりました。ここ尾州とイタリアのビエラ地⽅です。中⾼級品以下の⽣地はアジアやヨーロッパの諸国でもつくっていますが、紳⼠服に使⽤されるような⾼級⽣地の産地は希少です」

中伝毛織

尾州には、現在およそ80 社のテキスタイルメーカーが存在する。「中伝⽑織」は今年で創業60 周年を迎える⽼舗だが、さらに歴史ある機屋も多いのだとか。

「尾州には創業100 年を越える機屋さんもいくつかあります。弊社は歴史の深さから⾔えば10 番⽬くらいではないでしょうか。ただ、80 社と⾔っても年々廃業される会社も増えてきています。ほんの数年前まで150 社ほどありましたからね。正直なところ、⽑織物だけでは厳しくなってきているというのが現状です」

尾州地域の強みとエコロジーマインド

ファッション業界に安価で機能的な化学繊維や複合繊維が台頭したこともあり、⽑織物の需要は次第に落ち込んでいった。しかし、だからこそ地域の強みを⽣かした新たなモノづくりをすることで他国や他産地と差別化しているのだそう。

「尾州では⽣地づくりにおける各パートの専⾨職が産地に密集しているので、分業することで⽑織物の品質を保っています。他産地では⾃社の設備だけで⽷づくりから⽣地づくりまでできる会社さんもありますが、すべて⾃社で抱えるとなると品質を管理するのがとても難しくなります。弊社の場合は、⽷さえあれば、⽣地づくりまでを⼀貫して⾼い品質をキープしながら⾏うことができます」

また、従来の産業である⾼品質な⽑織物づくりを続けながらも、積極的に他産地の⽷を取り⼊れることでウールの新たな可能性を追求しているのも「中伝⽑織」の強み。そして、⽑織物に化学繊維を取り⼊れる場合も、天然繊維であるウールと同様に⾃然に優しい原料を選んでいるというこだわりようだ。

「ウールは原料の値段が⾼いということもあり、⽣産時に⼯場で出たロス分を原料ごとに識別し、粉々にしてもう⼀度⽷を作るという取り組みを昔から⾏っています。ウールに合繊し、新たな⽣地を開発する際にも、キュプラやトリアセテート、レンチング社のエコベロ™のように⼟に埋めても分解される⾃然に優しいものを選んでいます。昨今では、サステナビリティやトレーサビリティの素材が良いという潮流がありますが、天然素材を扱う我々からすれば当然のことです」

⽑織物産業の難しさと「尾州」ブランドの未来

天然繊維は肌にやさしく魅⼒的な機能を持つ⼀⽅で、“⽣き物”であり扱うのがとても難しい。とくに原料が⾼価な⽑織物に関しては、⽣地のロスが消費者の価格に跳ね返ってしまう可能性があるからだ。

「他の⽣地であれば、A 反、B 反、C 反と品質のランクをつけて販売できますが、原料の⾼い⽑織物はそうはいきません。1 ミリでも無駄にできないということもあり、尾州では傷を補修する技術もかなり発達しています。⽑織物の原料はオーストラリアなどで採取され、インドや中国、ベトナムなどで紡績されて尾州へ届けられますが、ワインのヴィンテージと同じように年によって良し悪しがあります。もちろんそれなりのものに仕上げることはできますが、扱い⽅が変わってくるという意味では品質をキープするのが本当に難しいです」

さらに年々原料⾃体の供給率が下がっているのも深刻な問題だという。

「ウールに使⽤する⽺⽑は、市場の80%くらいがオーストラリアで⽣産されていますが、15 年前に⽐べて⾐料⽤に飼育された⽺の量はおよそ30%程度に減っています。牧場で⽺の⽑を刈れるのは年に⼀度程度ですので、⾷⾁⽤のラムとして育てた⽅がお⾦になりやすいという理由でシフトする牧場も多いそうです。また、オーストラリア⾃体がここ数年砂漠化が進んでおり、⾷べる草がないことで⽺にとって育ちにくい環境になっているのも原因です」

ウールの希少性は年々上がり、とくに品質の⾼い⽑織物は⾼騰する可能性も⾼い。しかし、そんな厳しい市場こそが尾州地域のモノづくりの技術と強みを輝かせるのかもしれない。

「尾州という⾼品質な⽑織物のブランド⼒を維持しながら、その⼀⽅で従来の⽑織物に新たなテクノロジーを取り⼊れることで海外や他産地にはできない新たな⽣地づくりに挑戦していきたいと考えています。ウールは繊維の中で唯⼀、⾃然に縮んでフェルト化し重なり合うことでふくらみが出て暖かくなります。吸湿性や難燃性、抗菌性に優れ、しわになりにくく、⾃然にも優しいという素晴らしい素材。これからも製品を通じて、ウールの魅⼒を伝えていきたいです」

+CLOTHET

Flannelana SetUp

オーストラリア羊毛で作られた高級ウール原料「SUPER100」を使用し、中伝毛織で作られた梳毛フランネル生地を、ジャケットテーラー吉田泰輔氏監修により、布帛でありながらカットソーのような動きやすさを目指したこだわりの設計のセットアップ。

クラシックな表情を演出するラペル

昨今のジャケットに比べて、やや太めのラペル幅を採用。タイドアップにおすすめのクラシックな表情に仕立てました。
布帛でありながらジャージージャケットのような動きやすさを目指したこだわりの設計で特に肩まわりから腕にかけての可動域を広げています。

背抜き仕立て

ビジネスにバックパックを背負う人も増えていることもあり、+CLOTHETでは通気性をよくするため秋冬アイテムですがあえて背抜き仕立てを採用しています。

本切羽仕様とブランドアイコンの刺繍

袖口を本切羽仕様で仕立てているため、ボタンをはずして袖をまくり上げることも可能。雰囲気のある本水牛ボタンが使われていたり、ブランドアイコンの刺繍があしらわれているなど、品の良さを演出するこだわりが満載です。

パンツテーラー五十嵐徹氏監修

五十嵐 徹氏監修により、テーラーメイドに近い履き心地を実現。もも周りから膝に掛けてゆとりを多く取り、裾に向かって細くなるテーパードシルエットは締め付けがなく美しいシルエット。人体の構造である骨格や筋肉にも考慮した五十嵐トラウザーズのエッセンスを取り入れています。

パーマネントプリーツ加工

日常生活の中で雨や汗、歩行によってどうしてもあまくなるプリーツ。
今回のトラウザーには耐久性に優れたパーマネントプリーツ加工を施しており、常に美しいプリーツがキープできるようになっています。

ウエストまわりのイセと極細玉縁

イセを入れてウエストに丸みを持たせることでより身体にフィット。
イセとは・・・長短2枚の布の長い方を縮めて丸みやふくらみを出すこと。
3mmの細玉縁ポケットを採用することでドレッシーな表情に仕上がっています。