丸和ニット 「バランサーキュラー®︎」


運命的な出会いと魅力の再発見。
「バランサーキュラー®」が紡ぐ物語。


一般的に、ジャケットには布帛生地(※シャツ生地のような織物生地)を使用することが多いのですが、「+CLOTHET」では、極上の着心地とオンオフで使えるルックスを兼備するため、希少な編み機「バランサーキュラー®︎」で編み立てた生地を使用しています。生地を手がけるのは、和歌山の老舗ニットファクトリー「丸和ニット」。今回は、生地が生まれたストーリーと魅力を同社の未来を担う辻雄策氏、武志氏のお二人に語って頂きました。



__「バランサーキュラー®」︎という編み機はどのようにして生まれたのですか?

雄策「機械自体は1976年に作られていたそうなのですが、弊社の社長が出会ったのは2000年頃。ちょうど時代的に、自社で生産までを行うSPA業態のブランドさんが台頭してきたので、下請けとして将来への危機感を覚え、新しい何かを探していたと聞いています。


和歌山自体は綿ニットの産地なのですが、当時、弊社はほぼアクリル製品で商売を賄っていました。それが一段落し、何か変わったものを作らないといけないと思っていた矢先に、社長が『面白い丸編み機があるから見に行かないか』と知人に誘われて、北陸の地で出会ったのがこの「バランサーキュラー®」︎という機械だったそうです」。




__どんな用途で使われていた機械だったのですか?

元々はランジェリーを編んでいたらしいのですが、縦に筋、横に段が入ってしまうようなひどい仕上がりだったようで……。ですが、構造が面白かったので中古で購入し、改良を重ねて次第に品質を向上させていきました」。


武志「僕が入社した2003年頃、「バランサーキュラー®」︎はまだひどいものでした。調整ばかりが必要で、量産で回っているのを見たことがなかったです。編み上げるのに時間もかかる上に、上手く仕上がらないので、これは一体何のための機械なんだろうと思っていました(笑)」。




__「バランサーキュラー®」︎で編み上げられた生地が広く認知されるようになったきっかけを教えてください。

武志「正直に言うと、初めは僕たちもこの生地の何が良いのかを分からないまま販売していたんです。ところが、ある時にとあるアパレルブランドさんが結構な反数を発注してくれたんです。売っておいてこういうことを言うのはどうかと思うのですが、『何が良かったんだろう?』という感じでした。


その時に、そのブランドさんに言われたのが、製品にした時の仕立て映えがこれまでのカットソー生地と比べて美しいと。しかも、ジャージーなので型崩れもしづらく、着た時に非常に軽いのが良いと褒められたんです。


僕らは生地の状態でしか見たことがなかったので、分からなかったんですよね。それ以来、営業でもアピールするポイントが増えて、当時2台しかなかった機械が取り合いになっていました」。



__元々はそういう可能性を視野に入れて、機械を購入されたわけではないのですか?

雄策「決して機械を購入した時からその使い道がわかっていたわけではないんです。機械のメーカーさんもプロダクトアウトの一貫として、クオリティ度外視でランジェリーを作っていただけなので。弊社で購入した2台の機械に、購入代金よりも高いコストをかけて改良に改良を重ねた結果、スペックが上がっていったんです。


初めは本当に、僕らが生地をアピールするとしても『ニットなのに縦糸が入っています』とか『縦糸が入っているので、生地を断ち切ることができます』というくらいのものでしたよ」。


武志「そうですね。本当に、断ち切りができることと、ニットなのに伝染しないことくらいしか生地の魅力を理解していませんでした。それなのに生地の値段が高くて、非常にオススメしづらかったですね」。



__機械自体との出会いもそうですが、ある意味で運命的に生地の魅力を発見されたというわけですね。

雄策「そうですね。実際に生地を購入して頂いたブランドさんや、生地を使った製品を着用して頂いた方から、シルエットが綺麗とか、仕立て映えが圧倒的に違うという声を頂いて、ようやく消費者目線の魅力を知りました」。


武志「そういう意味ではWEBの画面上では魅力が伝わりにくいかもしれないですね。実際に触って頂いた方が圧倒的に良さが伝わると思います。」




__最後に、改めて「バランサーキュラー®︎」で編み上げられた生地の魅力を教えてください。

武志「1920本の針を使って、通常の丸編みとして編まれている部分に同じ1920本の極細のナイロンを経糸として通しています。これによって、カットソー生地の落ち感を残しながらもハリがあり、型崩れしにくいのが特徴です」。


雄策「見た目は完全にベーシックなのですが、肩にかけた瞬間に、先入観の重さとのギャップの軽さに驚かれて感動されると思いますよ」。




Photography:Yuco Nakamura
Edit:K-suke Matsuda