Jacket Tailor 吉田 泰輔氏

 


「+CLOTHET」のジャケットテーラーとして、パターン、デザインを監修している吉田泰輔氏は、ジャケット作りの指導者とも呼ぶべき存在。国内外ファクトリーへの技術指導や、テーラーを相手にしたセミナーやコンサルティング業務などを中心に活動。その多岐に渡る活動により厚い信頼を築いています。

ビスポーク、パターンオーダー、高級既製服、大量生産など、幅広いジャンルに対応できる柔軟性を持ち、どの分野においても高い水準でそれぞれに適したモノ作りを指導しています。

「+CLOTHET」では、世界中の原料から開発されたクオリティの高い素材に、吉田氏のパターンメイキング技術と、工場の特性を理解した技術指導を加え、快適な着用感にこだわった最高のジャケットを作り上げました。



■ 皇室御用達テーラーとして著名な洋服店の門を叩く

吉田氏はデザイナーへの憧れから文化服装学院へ進学しましたが、勉強していくうちに技術の方に興味を持っていきました。そして、意外にも紳士服の技術面に関しては服飾専門学校の講師でも答えられないことが多く存在することを知ります。

そこで、彼は図書館で古書を調べては、同じ志を抱くクラスメイトとともにテーラー巡りを始め、その中で皇室御用達の仕立て屋として名高い洋服店を知り、その門を叩きました。

そこではもう弟子は取らないという方針がありましたが、私塾へと通い詰め、卒業後にその洋服店が技術指導を行っていた日本屈指の実力を持つスーツファクトリーへ入社することになりました。



■  ビスポークと工場縫製を同時に経験

スーツファクトリーへの入社後は、ビスポーク部門に所属し、職人としての縫製技術を身につけながら、並行して工場生産の現場で実践による経験を積み上げていきました。

当時は、ビスポークとは全く異なる工場生産の中で、クライアントが目指す形をどのように工場縫製に落とし込むかということを常に考えていたと言います。

このように、ビスポークと工場縫製の両方を並行して勉強することで知識を深め、技術的なキャリアを積み上げていきました。その結果、経験や知識、技術力を認められ、工場の技術指導者として声が掛かるようになりました。




■  ビスポーク業界が抱える問題点

当時の国内工場は仕事が少なく、大量リストラによる縫製ラインの組み換えなどが行われていました。厳しい状況の中で生き残るためには、今までのやり方を捨て柔軟に変化をしていく必要があり、新たな挑戦をしていかなくてはいけない。
そのような環境で指導を続けていく中で、吉田氏の実績は高く評価され、海外に工場を持つ大手企業からも技術指導者として迎え入れられることになりました。

海外の工場では、今までに経験してきた高級既製服、高級オーダーとは全く異なる、量販店向けの安価で大量生産の服作りを経験することになりました。
これまでに求められていたこととまったく異なり、これまで良いと思っていたことが通じない環境。大変な反面、とても面白かったと吉田氏は語ります。
毎日様々な実験を繰り返しては検証をし、品質だけではなく、生産性についても厳しく求められる環境だからこそ、学ぶことも多かったのだと言います。


 

そもそも、マシンメイドとハンドメイドの境界はどこにあるのでしょうか。吉田氏は、これまでビスポークから工場縫製、大量生産工場まで様々なスタイルを経験してきた中でどちらかと言えばアンチ・ビスポークだと言います。

「ビスポークであれば、必ずしも良いものができるとは思いません。僕自身ビスポークで作られた洋服を沢山見てきましたが、正直に言うと、自分にとって良かったビスポークがほとんどありませんでした。労働環境に関しても、最低賃金すら払えないような状況で、若手を育てることができずに人材不足が加速しています。これからの時代は、ビスポークも工場も、工夫や差別化をできるところだけが生き残っていくので、あらゆる面を改善していかないと難しいと思います」。


■  “良い服”の条件は、人によって違う

吉田氏がビスポークではなく、工場縫製に魅力を感じたのには様々な理由がありました。

「工場縫製の場合、メーカーから提供される型紙を変えるわけにはいかないので、縫製でどこまで良いものを作れるか追求することが求められます。面白いのは、同じ型紙でも工場によってはまったく違う仕上がりになるということです。与えられた型紙をどのように縫うかという工夫や、くせを取るためのアイロン作業など、理想とする仕上がりイメージに近づけるためには技術が必要。そして、試行錯誤をする中で、今まで通説とされていたものが違うと気づくことも多々あります。
完璧な洋服というのは存在しないのですが、逆に改善したい部分が尽きないところが面白さだと思います。着心地が悪いとか、シルエットが悪いとか、粗探しをすればいくらでも文句を言うことができます。結局、服の良さを決めるのは消費者で、思っていることが人それぞれ違う中で、目指す方向性に合わせたモノ作りをするのが大事だと思います。だからこそ、ビスポークで手をかければ必ずしも良いものができるかと言えば、そうではないと思うんです。適正な値段でいかに着心地の良いものを作れるか、それが僕が目指すべき“良い服”です」。





■  「+CLOTHET」へのこだわり。

8月に販売予定のジャケットについて「今回のジャケットは、初めにサンプルを工場で作り、その仕上がり具合から工場のクセを見極め、より良い仕上がりになるよう型紙を調整しています。とくにこだわったのは、前身頃の落ち具合です。近年のイタリアなどで作られたジャケットは、真っ直ぐ落としているのですが、前身頃を少し外側に逃すことで、着用した時のシルエットをさらにシャープに見せることができます。


これはイタリアやイギリス、アメリカ、フランスなどの欧米諸国で200年以上も前、スーツ黎明期の洋服に見られる手法で、おそらく立体裁断から生まれたのではないかと思います。アイロンの技術が無い時代に、布の落ち具合で表現しようとした技術ですね。


前身頃を真っ直ぐ落とすとシャープに見えず、ウエストの絞りが無いように感じるので、無理にウエストを絞るというのが、日本のジャケットに見られる手法です。

そうではなくて、脇下を絞り、身頃の下部でボリュームを出してあげた方が、シャープで美しいシルエットになるんです。また、ラペルを太めにすることで、ニットジャケットながらクラシックな表情にしています。五十嵐氏が監修しているトラウザーとの相性も良いと思います」


「良い服とは、見た目が美しく着心地も良い」という考えのもと、服作りについて日々研究を進めている吉田氏。「+CLOTHET」のジャケットには、吉田氏が経験から築き上げてきた思考や技術が余すところなく詰まっています。

着た人の幸せを追求して作り上げた至極のジャケットは8月に入荷予定です。楽しみにおまちください。