「リサイクルスビン」と「ボタニカルダイ」との必然の出合い
───循環と再生のストーリーが、真にサステナブルなTシャツを紡ぎ出す

＋CLOTHETを代表する素材である、「スビンプラチナム」。その製品生産工程で生じる「裁断くず」の再生糸を使用した「リサイクルスビン」の生地を、原料である「スビンコットン」の木の枝に由来する染料によって染め上げる───そんなサステナブルで、新しい“価値”を実感できる循環型のプロジェクト、「ボタニカルダイ」が始動します。

「ギザ」「スーピマ」といった有名品種を上回るほど細くて長い良質な繊維を誇り、全コットン生産量のわずか10万分の１以下という希少性でも知られる超長綿「スビンコットン」。そのなかでも最高の品質を誇るファーストピック（初摘み）だけを使用した「スビンプラチナム」は、＋CLOTHETの顔ともいうべき究極のコットン素材です。

そんな貴重で希少な「スビンプラチナム」ですが、お客様の支持が高まれば高まるほど、多くの裁断くずが発生してしまうというジレンマも……。この素晴らしい素材を廃棄せざるをえないという、あまりに“モッタイナイ”状況を改善したいと考えた私たちは、再生繊維技術で業界をリードするナイガイテキスタイル社と協業。裁断くずから新たな糸を再生する「リサイクルスビン」プロジェクトをローンチしたのです。

こうして生まれた「リサイクルスビン」（リサイクル原料20%、ヴァージン原料80%を使用）は、洗練された光沢感のある「スビンプラチナム」とは一味違う、さりげなくカジュアルで味わい深い表情が魅力。これは＋CLOTHETというブランドに新たな選択肢と豊かな奥行きをもたらしてくれるものですが、実はその可能性をさらに拡張するであろうプロジェクトが、密かに進行しています。

それが今回ご紹介する、8月に発売予定の新シリーズ「ボタニカルダイ」コレクションです。

「ボタニカルダイ」とは、およそ40年にわたって独自の草木染めを調査・研究してきた菱川恵介さんが開発し、1998年に特許を取得した染色技術の名称。そして再生素材を駆使した「リサイクルスビン」の製品に、「ボタニカルダイ」を施すという極めてサステナブルな取り組みが、＋CLOTHETの「ボタニカルダイ」コレクションというわけです。

＋CLOTHETのプロジェクトリーダーである岡田は昨年発売した「リサイクルスビン」コレクションの展開において、裁断くずを再生した素材と、天然染料による「ボタニカルダイ」という技術との親和性にいちはやく着目。なにより、これまで廃棄されてきたスビンコットンの木の枝を使って「リサイクルスビン」を染色するというプロセスなら、＋CLOTHET らしい独自の“循環”と“再生”を具現化できる。そして環境負荷を低減する取り組みを通じてブランドのさらなる進化とアップデートを目指すという、幸せなストーリーを紡いでいけると考えたのです。

私たちは「ボタニカルダイ」という染色技術についての理解を深めるため、この唯一無二の技を継承する高橋 舞さんを東京・千駄ヶ谷の工房に訪ね、本コレクションの開発経緯や染色に掛ける熱い想いについて訊きました。

「私たちはクライアントとの対話のなかから、なにを表現し、なにを伝えたいのか。どうやってその物語を組み立てていくか、一緒に考えプロジェクトごとの“ストーリー”を紡ぎ出していくことを重視しています。ただ染めるだけでは、色・柄・デザインの世界で完結してしまいますよね。でも私たちにとっての染色、つまり『ボタニカルダイ』は、製品に視覚情報プラスアルファをもたらし、付加価値を与えるための特別な表現技法なんです」

「一般的な草木染めでは使用できる植物が限られ、黄色、ベージュ、茶系の色目が多く、色のバリエーションはあまり広くとることができません。また媒染剤という染色を助ける金属化合物を使用することにより、色素を定着させています。一方『ボタニカルダイ』では、植物の花、葉、根、茎、樹皮、果皮、鉱石など、さまざまな材料から色素を抽出し、バリエーションに富んだ染料を作成できるんです」

「開発当初は店頭に並べていた製品が退色してしまうとか、汗をかいたらオレンジが紫に変色してしまうなど、問題が頻発しました。そこで100%の天然にこだわるよりも、科学的な技術を上手に掛け合わせることで時代に合ったものづくりをし、人を感動させ、植物の良さを伝えようという方向にシフトしていったんです。

植物の、自然の力の“一部”を使わせていただくという考えのもと、ついに金属の媒染剤ではなくタンパク質を使って草木の色や成分を留め付ける技術を確立。「ボタニカルダイ」として、1998年に特許を取得することができました。以来26年間、私たちは自然の力という付加価値をいかに製品に取り込むか、生活のなかにどうやって自然を取り入れるかという取り組みを、ずっと続けてきました」

天然染料ゆえのナチュラルな発色、環境負荷の少なさ、染めの堅牢度（色落ちのしづらさ）や手仕事による高いコストは少しばかり気になるところ。そこで天然染料と科学的なプロセスとのハイブリッドによって、化学染料では決して味わうことのできない色合いと堅牢度の両立、独自の“ストーリー”を身にまとう悦び、自然環境への配慮、そして量産加工だからこその適正価格など、すべてを実現してくれる───そんな夢のような技術が、この「ボタニカルダイ」なのです。

「例えば毎年同じ桜の花びらで染め続けていれば、去年の桜と今年の桜で、ほぼ同じ色を表現することだってできるし、その年ごとの個性を強調して差別化することだってできる」と高橋さんは言います。そんなプロジェクトごと、ストーリーごとのレシピをつくれるのも、「ボタニカルダイ」ならではかもしれません。

「化学染料に比べれば堅牢度は落ちますが、安全性が高く染工所の職人さんも安心して染められますし、誰でも、簡単に、安定した加工ができます。品質が安定しているから売る側も買う側も安心して扱うことができて、気兼ねなく着用し、洗濯機で洗うことだってできるんです。やっぱり日常使いするものは、みんな気軽に着たいですよね。それでいて無意識のうちに植物の力を身にまとっていたり、自然を意識するきっかけになったりする。『ボタニカルダイ』の製品は、そういう存在であってほしいと思っています」

「リサイクルスビン」をベースに制作される、+CLOTHETの「ボタニカルダイ」コレクション。高橋さんとの対話を重ね、あらゆる原料から色素だけでなく、機能性の成分まで抽出できるという「ボタニカルダイ」の技術を踏まえて、岡田は「スビンコットン」を採取したあとの木の枝を使用することを提案しました。ともに「スビンコットン」を母とし、廃棄される運命にあった「裁断くず」と「木の枝」が再邂逅。「ボタニカルダイ」コレクションという、新たな生命を獲得する───これこそ+CLOTHETらしい、「再生」と「循環」を象徴する壮大な“ストーリー”といえるのではないでしょうか。

木の枝から抽出した色ですから、茶系、あるいは黄色系のカラーがラインナップされることは間違いないでしょう。しかし、きっとそれだけではないはずです。なぜなら「ボタニカルダイ」の魅力のひとつは、素材の見た目からは想像できない、あっと驚くような色彩を表現できることだから。そしてその色味は、植物が種から芽、幹へと生長する過程のなかで培われた、紛うことなき自然の色。肉眼では見つけられない隠れた色を、科学の力の助けを借りて浮かび上がらせているのです。

「最高の素材を少しもムダにしたくないという」想いから生まれた「リサイクルスビン」と、優しい草木染めでありながら日常使いの高い利便性も備えた「ボタニカルダイ」とは、間違いなく相性抜群。+CLOTHETにとっては必然の、幸せな出合いといえるでしょう。そして、まずは「スビンコットン」由来の枝を染料の源としましたが、将来的にはアナザーストーリーも期待できる、真に“サステナブル”なプロジェクトです。

記念すべき＋CLOTHETの「ボタニカルダイ」ファーストコレクションは、8月発売予定。どうぞご期待ください。