リアクティブデニムの深化

リアクティブデニムセットアップを寄りで撮影し、生地感の良さが伝わる画像

色落ちしないストレッチデニム、リアクティブデニムがリニューアルしました。要諦は+CLOTHETの顔のひとつであるソロテックス®︎の採用。欧米のラグジュアリーブランドからも高く評価されるリアクティブデニムがなぜ、素材変更をする必要があったのか。そこにはつねに歩みをとめないものづくりの姿勢がありました。

世界が認めた、新しいデニム

デニムとしての風合いを保ちつつ、色落ちしないデニムがつくりたい──。+CLOTHETの母体である生地サプライヤーが2014年に販売を開始したリアクティブデニムはデビューするなり欧米のラグジュアリーブランドから注文がつきました。現在の売り上げ構成比は8割を海外が占め、熱烈なリピーターに支えられています。

篠原テキスタイルのある備後地方を代表する河川、芦田川の風景 製織を担当した篠原テキスタイルは福山駅から北に10キロメートルあまりのところにあります。近くには備後地方を代表する河川、芦田川が流れます。デニムづくりには豊富な水が欠かせません。

生デニムは育てるというくらいですから、洗って色が落ち、アタリが出るプロセスを含めて楽しむものです。ところがこの経年変化を良しとしない声が少なからずありました。異を唱える声があったのは事実であり、これを真摯に受けとめたのです。そして福山という世界に冠たる産地を抱える日本であれば、この声に応えることができるのではないかと考えました。

最大の見どころはリアクティブの名のとおり、反応染料(リアクティブダイ)を使った染色方法にあります。原料となるコットンの染色方法にはいくつかありますが、染色堅牢度を高める方法は反応染料一択でした。もっともポピュラーなインディゴ染料によるロープ染色は糸表面にのみ染料を付着させます。いっぽう、化学反応を利用した反応染料は芯まで染まり、ちょっとやそっとでは色落ちしません。

見逃せないのは反応染料を用いつつ、デニムらしさを損なわなかったことです。

リアクティブデニムでは旧タイプと呼ばれる反応染料を調達しています。現在流通する染料は堅牢度については申し分がありませんが、きれいに染まりすぎる。旧タイプはインディゴに通じる奥行きを表現することができるのです。

篠原テキスタイルの様子 下請けからの脱皮を図った篠原テキスタイルはオリジナル商品の開発にシフト。その数は現在、1000を超えます。

ソロテックス®︎に白羽の矢

そしてこのたび、さらなる完成度を求めて白羽の矢を立てたのがソロテックス®︎でした。

我々が採用するリアクティブデニムのもうひとつの特性は伸縮性をそなえているということ。世にストレッチデニムといわれるデニム同様、我々もポリウレタンを使っていました。このたびのリニューアルの勘どころはこのポリウレタンをソロテックス®︎に置き換えたところにあります。

理解を深めるために解説すれば、デニムは経糸と緯糸という2本の糸を綾織りにした生地をいいます。伸縮性が求められるのは横方向ですから、ソロテックス®︎が織り込まれているのは緯糸ということになります。

ポリウレタンの伸縮性能はいずれ衰えます。つまり、膝抜けが生じる可能性がありました。細心の注意を払い、レシピを構築したリアクティブデニムにおいてそのような不具合が発生することはありませんでしたが(スタッフのひとりが2年着用したセットアップもまるでくたびれたところはありませんでした)、万に一つの不安でも、早い段階でその芽を摘みたいと考えたのです。

ソロテックス®︎は帝人フロンティアが開発した機能繊維で、螺旋状の分子構造をもつこの糸は伸縮性と同時に形態安定性をそなえます。付け加えるならば、しなやかな風合いと優れた発色性もその繊維の特徴です。

経験値が導き出した最適の製織速度

製織を担当した篠原テキスタイルは試行錯誤の末に正解にたどり着きました。

デニムの持ち味を引き出すには経糸のコットンをゆるくセットする必要があります。ゆえに製織時の経糸は非常に不安定な状態です。そもそも繊細に扱わなければならないところへもってきて、その緯糸は細番手の合繊です。必然的に通常よりも低速で織ることが求められました。篠原テキスタイルが導き出した製織の速度は毎分およそ350回転。経糸緯糸ともにコットンであれば4〜500回転というからかなり抑えていることがわかります。

篠原テキスタイル・エアジェット織機が稼働している様子 緯糸を空気の力で運ぶエアジェット織機により織られます。

物性をいっそう高める工夫も行っています。打ち込み本数を5%増やしているのがそれです。これにより、キックバック性(生地が元に戻る力)が向上しました。

ソロテックス®︎というつくり手泣かせの糸をものすることができたのは、ひとえに篠原テキスタイルに経験値があったからにほかなりません。

デニムの産地、広島の福山市で1907年に創業した篠原テキスタイルは現在、5代目の三兄弟が切り盛りしています。かつては下請けとして名を馳せましたが、海外への産地移転などで苦しい状況が続きます。これを打開すべく兄弟が選んだ道は自社企画商品。テンセル™やリサイクルポリエステル、リサイクルコットンなど、時代の先端をいく糸を原料とした素材開発を行ってきました。オリジナルのラインナップはいまや1000種を超え、売り上げ構成比の75%を占めるまでに。その歩みはまさにトライアルアンドエラーの繰り返しだったそうです。しかしめげずに歩み続けたことで、確固たる足場を築きました。

織りあがったデニム生地が並ぶ様子 織りあがったデニムは一つひとつ、検反器で検査します。

福山の叡智が結集されている

事前の下ごしらえも特筆に値します。たとえば、生地の段階で洗いをかける原反洗い。コットンは洗えば膨らみ、緯糸の合繊が目立たなくなります。同時に色は落ちきり、縮みきりますので購入後の経年変化が最小限にとどめられるというメリットもあります。

原反洗いは半乾きの状態でシワを伸ばし、天日干しして完成します。職人の経験と勘がものをいうプロセスであり、それは糸づくりに始まるすべてのプロセスにいえることです。

福山という産地とがっぷり四つに組んでいるからこそ、+CLOTHETは世界を見渡しても稀なものづくりをかたちにすることができるのです。

モデルが着用したリアクティブデニムの男前な質感の画像 ソロテックス®︎を使うことで膝抜けに強いデニムが完成しました。

トップス2型、ボトム1型をラインナップ

リアクティブデニムをまとったアイテムはテーラードジャケット、3rd タイプジャケット、そしてイージートラウザーの3つです。

デザインが美しい、+CLOTHETのリアクティブデニムテーラードジャケットとトラウザーのセットアップ テーラードジャケットとイージートラウザーのセットアップ。

テーラードジャケットは大きなラペルと狭く、深めのVゾーンに象徴されるクラシカルなパターンを引いています。設計構造の工夫により、ボタンを留めたときはもちろん、外したときもシャープなシルエットが保たれます。

新しく登場した、+CLOTHETの3rd タイプジャケッとトラウザーのセットアップ 3rd タイプジャケットとイージートラウザーのセットアップ。

3rd タイプジャケットは軽やかな着心地を担保するショルダーライン、体型をカバーする直線的なシルエット、そしてクリーンな印象を与えるデニム同色のステッチを特徴とします。

イージートラウザーの特筆すべき点は動きやすさとすっきりした見栄えを両立させた股ぐりのパターン。熟練の職人仕事がなせる技です。

デザインの面でも一切の妥協なくつくりこんだ自信作であり、欧米のラグジュアリーブランドも認めたリアクティブデニムの凄みを知るまたとない一着です。

*3rd タイプジャケットは5月上旬に発売予定です。

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