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+CLOTHETは、なぜ再び「テーラードジャケット」をつくり直したのか?

2018年のブランド創設と同時にスタートした、+CLOTHETとテーラー吉田泰輔氏との協業によるジャケットづくり。国内外ファクトリーへの技術指導や、テーラーを相手にしたセミナーやコンサルティング業務などを中心に活動する吉田氏が、一般消費者に向けたユニバーサルな既製服づくりに挑むこのプロジェクトは、スタート当初から大きな注目を集めてきました。そして着る人の日常に寄り添いつつ、本格的テーラードの風格をも漂わせるそのプロダクトは、オンラインのみで展開されるブランドとしては異例の支持を獲得し続けています。

両者のコラボレーションにふさわしい、「サルトリア(テーラー)の技巧とハイテク素材の融合」を体現した初代「テーラードジャケット」ですが、23年に初めてのリニューアルを敢行。細身のシルエットは動きやすさとトレンドを両立したゆとりのあるシルエットへと刷新されました。そして26年春、早くも3代目となるニューモデルが誕生します。

この新型「テーラードジャケット」が掲げるテーマは、「究極の汎用性を追求した、スタンダードへの回帰」。時代性やニーズ、ライフスタイルの変化に合わせて進化を続けてきた+CLOTHETの「テーラードジャケット」が、真にユニバーサルでタイムレスな1着として生まれ変わります。

ひとりのテーラーによって「定番」を意識しながら継続的に監修され、お客様に愛されてもいる人気アイテム。それが、これほど短いスパンでリニューアルされるのはとても珍しいことなのではないでしょうか。

+CLOTHETは、なぜ再びジャケットをつくり直したのか───そこにはどのような「進化の核」が隠されているのか、吉田泰輔さんへのインタビューを通して、その妥協なきものづくりの姿勢と、新モデルの全貌に迫ります。

「さらなるリニューアル」の意図、そして進化について

2023年(前回)のアップデートでは、「ビッグシルエット」というファッショントレンドやカジュアルなジャケット&Tシャツというスタイルの定着など、世のライフスタイルの変化を巧みに吸収。胸周りにゆとりをもたせ、逆にアームホールをコンパクトにしてバタつきを抑えるなどの大きな見直しが行われました。“完成”しているものをあえて見直し、見直したものをさらに再構築するという、今回の取り組みに踏み切った最大の理由がどこにあるのか───そんな素朴な疑問を、吉田泰輔さんにぶつけてみました。

「お客様のコーディネート、着る場面の変化が大きいと考えています。現在のビジネスパーソン、お客様の嗜好を分析すると、インナーはTシャツやポロシャツがメインになっています。そんなスタイルに対して、以前のモデルでは少し『行儀が良すぎて合わせづらい』のではないか、と感じる部分がありました。そこで今回のリニューアルに当たってこだわったのは、汎用性を極限まで高めること。主張の強いデザインを控え、徹底的に“尖った”部分を排除するかたちにしているんです」

一過性のトレンドを追うのでも、テーラー自身の強い主張を押し出すのでもない。巷間では依然としてリラックス感のあるカジュアルなスタイルが市民権を得ているものの、今回はあえて“王道のスタンダード”へと立ち還ったのだ、という。これによりカジュアルアイテムとのバランスが格段に良くなり、クローゼットのなかにあるどんな服とも調和する、万能ジャケットへと進化を遂げたのです。

サルトリアの“技術”と機能“素材”のマッシュアップ

では具体的に、どこにどのようなアップデートが施されたのでしょうか。その「進化の核」は、テーラーならではの緻密な型紙操作とカッティングの技術に隠されているようです。

「一番大きな変更点は、肩周りです。以前のモデルは、肩先を寝かすことで少し尖り気味にし、全体を“逃がす”ように流れるシルエットを採用していました。これは私が得意とする、クラシックスタイルの型紙テクニックを反映したものでした。しかし今回は、肩を少し“起こす”ようなフォルムにしています。アームホール全体が立ち上がって、身頃全体が真っ直ぐ、ストンと落ちるようなかたちに変更しています」

この技術的な変更により、どこから見ても非常にシャープで端正な印象を与えるようになりました。 さらに、全体のデザインバランスも現代的に微調整されており、掛けボタンの位置やポケットの位置を以前よりやや上に、Vゾーンも若干狭く設定されています。これにより、現代のスタンダードであるシングル2つボタンの黄金比を実現しました。ラペル幅は太すぎず細すぎず、時代を感じさせないオーソドックスなプロポーションへと見直されています。

さらに吉田さんは、テーラードの技術を駆使しながら、スポーティーなジャージーやテック系の機能素材を扱うことの奥深さについても明かしてくれました。

「最終的に製品に求められる要素、たとえばシワになりづらい、型崩れしにくい、シルエットがきれいで軽く羽織れるといった点を突き詰めると、デザインはひとつの方向へと収斂されていくんです。そこに先進的な機能素材を融合するという考えはとても新鮮ですし、それに合わせた型紙の調整も必要になってくる。毎回、ものづくりの工夫を勉強させてもらっています」

海外の縫製工場に対して、「寝かす」「起こす」といった感覚的なニュアンスを伝えることは容易ではありません。何度もキャッチボールを重ね、上がってきたサンプルが想定と違っている場合は修正をお願いするなど、「なによりコミュニケーションがとても大切」と笑う、吉田さん。何気ないその言葉からは、既製服づくりにもビスポークと同様のこだわりや熱量を注ぎ込む、高潔なクラフツマンシップが窺えます。

3素材で展開されるニューモデル、それぞれの個性

今回のリニューアルでは、魅力的な3つの生地バリエーションが展開されます。ひとつの基本型紙を用いながらも、生地の伸縮性や「イセ」の入りやすさといった特性に合わせて緻密な微調整が施されているのは、以前から変わらない+CLOTHETならではの凄みといえます。

「今回はスケジュールの都合上、最終的な生地決定後の型紙の微調整は企画チームにお任せしました。でも生地の特性も工場のクセも知り尽くしているから、安心しておまかせすることができた。こうしたチームワークによって、非常に緻密な最適化が行われているんです」

そう語る吉田さんが、美しいシルエットを構築するうえで最も重視しているもの。それが、生地の「横方向のハリ」なのだとか。

「“落ち感”には縦方向のハリ、服の立体感には横方向のハリが不可欠です。横軸のハリがあればシワにもなりづらく、美しいシルエットが表現できるんです」

この横方向のハリ感を備えつつ、それぞれが明確な個性を持っているという、今回登場する3種の生地。それぞれのポイントを、詳しく教えていただきました。

「100%ウールのテックウール生地では、機能性ではなく、あえて“ド定番の王道”を追求。ストレッチ性はなくとも身体の動きやすさを損なわないよう、考え抜かれた型紙によって可動域を確保しています。まさしくサルトリアの技術によって、快適な着心地が実現されている1着ですね」

「強撚のコットンを使ったパナマ織りの生地は、触れた時のシャリシャリとした清涼感が持ち味です。横糸に機能素材を使用しているためストレッチ性も備えており、夏でも快適に過ごしていただけると思います」

「一般的なコットンのシアサッカーでは生地のハリがないため、カジュアルでボクシー(箱型)なシルエットが選ばれがちです。しかしウールを高混率で配合したテックウールを採用することで、ウール特有のハリが生まれ、新型ジャケットの立体的で美しいシルエットを描き出すことができました。高い機能性と洒脱なエレガンスを兼ね備えた1着だと思います」

おすすめのスタイリングと大人の品格

吉田氏が監修するジャケットは、着るだけで大人の貫禄や色気が漂うアイテムとして高い評価を得ています。前作にも増して洗練されたニューモデルは、どんなシーンで、どのように着こなすのがよいか、おすすめのスタイリングも教えていただくことができました。

「“ド定番”を目指したウールなら、タイドアップした本格的なドレススタイルから、インナーにTシャツを合わせたカジュアルダウンまで、あらゆるシーンに対応できます。同素材のパンツと合わせ、シックなスーツスタイルとして楽しむのもいいですね。

パナマ織りのコットンは、よりリラックスしたカジュアルなシーンに適しています。センタークリースのないパンツや、艶感のあるテック系生地のパンツと合わせると、現代的で軽快なスタイルに仕上がると思います。

ウールシアサッカーも、カジュアルに着こなすのがおすすめです。例えば、クリースの入った綺麗な綿パンツにシンプルなTシャツを合わせ、足元にはきれいめのスニーカーやローファーを合わせる。シアサッカーの涼しげな素材感が、大人の余裕を感じさせるサマースタイルを演出してくれるでしょう」

肩周りの構築感が生まれ、よりシャープに落ちるシルエットへと進化したことで、ドレスシャツを合わせれば端正に、Tシャツを合わせれば洒脱にキマる。アイテムを選ばない究極の包容力が、着る人のスタイルをさりげなく格上げしてくれそうです。

テーラー・吉田泰輔さんのフィロソフィー

吉田さんは今回のリニューアルで、自らの「尖った部分」を排除し、限りなくニュートラルなスタンダードを目指したといいます。その背景には、作り手としての深い哲学がありました。

「私が服づくりの基礎を教わった先生は、伝統的なテーラリングとは真逆の、独自のスタイルを築いた方でした。常に『なぜ、こうするのか』という自問自答、仮説を立ててはそれを検証するということを繰り返す人だったからこそ、そこで『洋服の正解はひとつではない』という学びを得ることができました。

工場でお客様と直接やり取りをするなかでは、人によってまったく異なる要望があり、それに柔軟に応えていく経験を積み重ねました。そんな経験により、自分の芯をもちつつ、お客様の求めに柔軟に対応するということを常に心掛けるようになったんです」

お客様と真摯に向き合い、型紙という設計図から最終製品までを俯瞰することができる吉田さんだからこそ、+CLOTHETのお客様からの「もっとバリエーションに富んだコーディネートを楽しみたい」というリアルな声に、応えることができたのです。

「先代モデルは、私のなかにある『ジャケットとは、こうあるべき』というこだわりが少し強く出てしまっていたかもしれません。しかし今回は、改めてブランドのコンセプトに寄り添い、“尖った部分”を削ぎ落とすことを強く意識しました。そのおかげで、お客様自身がさまざまなコーディネートで自分のテイスト、個性を表現できるものになっているはずです」

確固たる伝統やルールの存在する世界でのものづくりで、見るからに“個性的”な装飾や特徴を極限まで削ぎ落としていったあとに残るもの。それこそが本物の“個性”であると、かつて著名な作陶家が教えてくれました。

一流のテーラーである吉田泰輔さんが培ってきた技術と美意識を注ぎ込み、”職人”に徹して究極の汎用性を目指してデザインされた、第3世代の「テーラードジャケット」。ユニバーサルでタイムレスな、究極のスタンダードともいうべき最新作は、最も吉田さんらしい“個性的”な1着でもあるのかもしれません。

衣服というプロダクトは、着る人が袖を通し、その人の生活に溶け込んで初めて完成するといわれています。新型「テーラードジャケット」はクローゼットにあるどんなアイテムとも優しく調和し、その人だけの、等身大の魅力を最大限に引き出してくれるはず。そして皆さんの日常に、新たな自信と高揚感をもたらしてくれることでしょう。


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