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※この記事は前後編でお送りします前編記事はこちら>
ブランドの運営会社が生地のエキスパートの+CLOTHETでは、その分、選択肢が豊富なことも五十嵐氏の創造力を刺激しているようです。なかには企画チームが注目していなかった生地から思いがけないヒット商品が生まれることも。
「生地選びは、最初にいくつかの見本を並べてディスカッションしながら候補を絞り込み、アイデアを膨らませていきます。このダブルジャージーの生地を選んだいちばんの理由はキックバックのよさ。ストレッチ生地を使ったスラックスは天然繊維を主体にしたものが多く、戻りが弱くて型くずれしてしまうのが難点でした。しかし、これは見た目が織物みたいでハリもある。パンツには使ったことがない生地だと聞きましたが、逆にスポーティな機能素材なのに、かたちはスラックスという組み合わせは、潜在的なニーズがあると感じていました。」
洗濯機で洗っても、シワになりにくく、縮まず、速乾性もあるため、メインテナンスは非常に簡単。イージートラウザーのデザインとの相性もよく、発売後、あまりの反響の大きさに五十嵐氏自身も驚いたそうです。
360度どの方向にも伸びるので、まるでジョガーパンツをはいているかのように快適。商品は「Matte Twist Easy Trousers」。
※1)形状回復に加え、従来のポリエステル、ポリウレタン、ナイロンでは表現できなかったソフトな風合いやストレッチ性、発色のよさなどを特長とする合成繊維。※2)収縮率の違うタテ糸を組み合わせて平織りし、仕上げに縮ませて凹凸を出した生地。日本では「しじら織り」とも呼ばれる
「コットンとポリエステルでつくられる従来のサッカーは、通気性がよく清涼感があるのが持ち味ですが、すぐにシワになってしまうのが弱点でした。でも、この生地はストレッチ性があり、シワになりにくくて型くずれにも強いので、IGARASHI TROUSERSでも好評です。ウールの高級感と涼しさ、扱いやすさを兼ね備えていることもあり、毎年セットアップで買い足すファンが多いため、+CLOTHETでも絶対に支持されると思っていました」
サッカー生地は「TECHWOOL®︎」シリーズのひとつ。ちなみにIGARASHI TROUSERSのビスポークでも、ショートパンツは隠れた人気商品だそう。商品は「TECHWOOL® Seer Sucker Short Pants WOOL&SOLOTEX®」
生地サプライヤーでなければできなかった挑戦
「TECHWOOL®︎」シリーズの、春夏用の平織り生地「ウールトロピカル」を使ったイージートラウザーも人気の一本。100%ウールでありながら、特殊加工によりナチュラルストレッチ性とイージーケア性の両立を実現させています。
「この生地は、暑い夏場でも過ごしやすいように、軽くて、涼しいもの、という基準で選びました。実際にはいてみるとわかりますが、まるでシャツのような着用感で、身に着けているのを忘れてしまうほど。しかも、こういうSUPER140’s(※3)の生地を使ったパンツは、ビスポークでは10万円を超えるのが常識で、既製品でも通常はこの価格で商品化するのは無理です。これは生地サプライヤーが運営するブランドでなければできなかった挑戦でしょう」※3)SUPER表示は、原料の細さの単位。原毛自体の繊維が細いほど単位が大きくなり、SUPER140’sでは糸を構成する繊維が16.5ミクロンのものを指す。
イージートラウザーのウエストを絞るドローコードは内側に収納できるうえ、ゴムも両サイドだけに配しているため、ベルトをすればイージー仕様であることがわかず、ウールトロピカル生地ならドレッシーなスタイルにも対応可能。商品は「TECHWOOL® Tropical Easy Trousers」。イージートラウザーが誕生した2020年といえば、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大の影響もあり、多くの企業がテレワーク(在宅勤務)を導入するようになった激動の年。新しい生活様式への移行を余儀なくされる一方で、政府主導で進めてきた多様な働き方を認める「働き方改革」が大きく前進し、スーツを着る機会が減少した時期と重なります。
そんな社会の変化が追い風になったのは間違いありませんが、+CLOTHETではデビュー以来、試行錯誤を繰り返しながらドレスカジュアルにふさわしい生地の開発に注力し、オン・オフの着用シーンを限定せずに着用できる新しいジャンルを開拓してきたという自負があります。
+CLOTHETでは4㎝幅のダブル仕上げを推奨。「イージートラウザーはデザインが上のほうに集まっている分、シングル仕上げにすると全体的に間延びしてしまうので、下にもデザイン的な要素を加えたほうがバランスよく見えます」と五十嵐氏。
Photos: Teppei Hoshida
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