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My T-shirts, My Life
-Tシャツのある日常- vol.19

Tシャツには不思議な魅力があります。シンプル極まりないけれど、Tシャツにかける愛情やこだわりは人それぞれ。連載「Tシャツのある日常」では、さまざまな分野の第一線で活躍する人たちのライフスタイルを通して、Tシャツにまつわるエピソードや仕事への思いを聞いていきます。

「最高レベルの“普通”の靴」で、世界を魅了するシューメーカー
ヨウヘイ フクダ代表・福田洋平|No.19

数寄も贅も知り尽くす、世界中のエグゼクティブを魅了し続ける日本発のレザーシューズブランド、「ヨウヘイ フクダ」。その代表である福田洋平さんは、伝統的な英国靴の仕立てに独自の哲学を融合し、ミリ単位の細部へのこだわりと全体の調和が両立された至高のビスポーク、MTO(パターンオーダー)、レディ・トゥ・ウエア(既製靴)の紳士靴を生み出し続けています。
現代に生きる日本人としての矜持とともに“古典的”な靴づくりの極みを追求するその姿勢は、彼自身のライフスタイルや、日々の「仕事着」選びにも色濃く反映されているようです。

東京・北青山にある静謐なショールームと、木型の木の粉が舞い散る工房。その境界をシームレスに行き来する福田さんに、靴作りの原点から、職人であり経営者でもある身ならではの衣服へのこだわり、そして自らのブランドと靴業界の展望まで、さまざまなお話を伺いました。

ファッションへの情熱と、運命を変えた「名もなき靴」

「私は富山県出身なのですが、小学4、5年生ぐらいにはファッションに強い興味をもつようになっていました。いつもお小遣いを握りしめては、自転車に乗って街の古着屋さんに足繁く通う───そんな少年時代を過ごしていたんです」

ファッションの原体験は?という私たちの問いに対し、福田洋平さんは自身のルーツを振り返り、懐かしそうに語り始めてくれました。最初は店先にある1,000円ほどのヴィンテージTシャツを買い集めるところから。高校生くらいになるとその熱はさらに高まり、アルバイトで月10万円ほどを稼ぎ、年に数回は夜行バスに乗って東京までショッピング遠征をするようになっていたのだとか。

しかし、それほどの情熱を持ちながらも、高校卒業後の明確な進路は決まっていませんでした。折しも“アメカジ”ブーム真っ只中。中学時代はナイキのスニーカーやレッドウィングのアイリッシュセッターなど、福田さんの興味が向く対象にも、まだ英国靴の気配はありませんでした。

「当時お付き合いしていた相手がアメリカに留学するというので、私も『じゃあ、自分も高校を卒業したら海外に行こうかな』などと簡単に考えていたんです。結局、語学留学の行き先はイギリスのブライトンに決めたのですが、当時の私にとってイギリスは“紳士の国”。だから、長期で滞在するからにはテーラードのスーツが必要だろう、と勝手に勘違いしてしまっていて……(笑)。クラシコイタリアが流行っていた時代背景もあり、アリストクラティコというブランドのスーツを買い揃え、ヤンコというスペインブランドの既製靴を買ってから渡英しました」

そんな手探りのイギリス生活の中で、運命を変える出合いが訪れました。語学学校時代に、ロンドンから電車で1時間ほどの距離にある紳士靴の聖地・ノーサンプトンにある「ノーサンプトン博物館」を訪れた時のことです。

「そこで、1920年代に製作された無銘のオックスフォード(内羽根式)を目にしたんです。その瞬間、なぜだかは分からないけれど、鳥肌が立つほどの感動を覚えました。いままで見てきた市販の靴とはまったく異なる圧倒的なクオリティを目の当たりにし、『いつか自分もこんな靴を作ってみたい』と、強く思ったんです」

この衝撃的な本格靴の“原体験”が、福田さんを靴づくりの道へと導きました。その後、現地の靴職業訓練校に通いながら、名門ジョンロブの既製靴を手がけるノーサンプトンの工場でアルバイトを経験。文字通り世界最高峰の靴づくりを目の当たりにするとともに、そこで手に入れた最高級の靴であっても、日本人である自分の幅広な足にはフィットしないという現実に直面しました。そんな経験とジレンマが、一人ひとりの足に合わせて製作する「ビスポーク」の世界へと、福田さんをさらに深くのめり込ませていったのです。

「醤油ラーメン1本」で勝負するという美学

1999年から2006年までイギリスで研鑽を積み、帰国。最初の1年間は車社会で革靴の需要が少ない富山県の靴修理店で働きながら方向性を模索し、2008年に東京で、満を持して自身のブランド「ヨウヘイ フクダ」を立ち上げます。そんな福田さんが追求する靴作りの理想形は、「時代に左右されることのない最高の普通の靴」だといいます。

「私自身、一番完成されている革靴の理想形は、1920年代から30年代の靴だと考えています。例えばヒールの積み上げひとつとっても、厚みのある革を1、2枚重ねて一気に仕上げた方が圧倒的に早い。しかし、少しずつ手作業で角度を調整しながら、薄い革を何枚も何枚も重ねていく方が、流れや一体感が出て美しく仕上がるんです。そうした時代の緻密で目立たない職人技に、強く影響を受けていますね」

設立からの約10年間は完全オーダーメイドのビスポークのみを手がけていた「ヨウヘイ フクダ」ですが、2017年からはレディ・トゥ・ウエア(既製靴)の展開も開始。しかし、既製靴といえども、その製造工程はビスポークとほとんど変わらないといいます。

「一般的な工場生産の既製靴なら3時間ほどで仕上がるところを、私たちの既製靴は釣り込みやウェルトの縫い付けなど手作業の工程を踏襲しているため、1足完成するまでに60〜70時間(約1週間)を要します。必然的に製作できる数には限りがありますが、ラーメン屋さんが世のなかのトレンドに合わせてかき氷やハンバーグも出すのではなく、一番美味しい、一番自信のある“醤油ラーメン”1本で勝負したいんです。年間およそ250足という限られた生産数であっても、自分たちの理想の靴を求めてくださる方に真っ直ぐお届けする方が楽しいですからね」

奇をてらった表面的な装飾は行わず、100年前の教科書に書かれているような伝統的な意匠を重んじ、「最高の“普通の靴”を目指している」という福田さん。靴だけが主張するのではなく、着用者のライフスタイルやトータルコーディネートに寄り添う、自然なバランスを最も重視していることも教えてくれました。その確かなクオリティと芸術的な佇まい、そして誠実な提案により、顧客の半数以上がリピーターとして定着しているという事実にも納得です。

「上品な快適さと職人のリアリティ」を叶える、確かな服選び

まさにミリ単位の精度で妥協なき靴づくりを行う福田さんですが、自身のアトリエでの衣服選びにも、製作と接客を並行して行う職人ならではの、非常にシビアな基準をもっているようです。

「以前はオーダーしたシャツやパンツを着用して作業していた時期もありました。ですが私たちの仕事は、木型を削る際の木の粉などで本当にすぐに汚れてしまう。立ったり座ったりの作業も多く、パンツの膝が抜けやすかったり、擦れて白くなってしまうことも多かったんです」

かといって、顧客とショールームで接する際に薄汚れた作業服では失礼になってしまい、一方で、工房で働く際には綺麗すぎる格好では“リアリティ”がなくなってしまう───そこで上品に見えるインポートの高級なカジュアルウエアを購入したものの、ハードに着用して毎日のように洗っていると、いつの間にかLサイズがSサイズにまで縮んでしまい、仕事着としては機能しなかったこともあったといいます。

そんななか、福田さんが出合ったのが+CLOTHETの製品でした。

「お客様が+CLOTHETのデニムパンツをお召しになっているのを見て、つい『それ、どこで買われたんですか?』と訊いたのがきっかけでした。そこから自分でインターネットで検索して恵比寿のショールームにお邪魔し、試着させていただいたんです。まずはお客様の真似をしてボトムスから入り、Tシャツやポロシャツを追加していった感じですね」

実際に袖を通し、タフさと見栄えを求められる現場で日々着用するなかで、福田さんはその機能性と圧倒的なコストパフォーマンスに惚れ込んでいきました。

Tシャツは普通に何度洗っても生地がクタクタにならず、シルエットが崩れることがありませんでした。ポロシャツに関しても毎回洗って着ていますが、着心地や細部のディテールに至るまで、マイナスな部分が一切ないんです。特に素材選びが、本当に秀逸だと思いますね」

さらに、カットソーやパンツだけでなく、この日着用していたポロシャツやアウター類も、福田さんの完璧なワーク&ライフスタイルを支えています。

「このBDUジャケットは素材がすごく軽やかで、飛行機のなかで肌寒いと感じたときにサッと取り出して羽織るなど、旅先でも重宝しています。ポケットの仕様も、空港を利用する際などにとても使いやすいんです。生地と製品状態の両方で洗い加工が施されているそうで、新品特有のぎこちなさがなく、最初からこなれた風合いが出ているところも気に入っています。

それから、パンツは本当に優秀ですね。色落ちしたデニムではお客様に対してカジュアルすぎる懸念がありますが、このパンツはとても上品。それでいて作業をしていても膝の生地が伸びて抜けるようなことがなくて、クリース(折り目)もしっかりと保たれているんです」

上品さを備えた快適性、リアリティのある実用性という相反する条件をクリアする良質な+CLOTHETのアイテムは、審美眼に優れる「ヨウヘイ フクダ」の顧客をも魅了。そして福田さんの妥協なきスタイルを力強く支えているのです。

日本のものづくりを世界へ、そして次世代へ

現在、「ヨウヘイ フクダ」の工房は11名のチーム体制で運営。「1人ですべての工程をこなすよりも、底付けや磨きなど、それぞれの専門の職人が分業した方が結果として高いクオリティを生み出せる」という考えのもと、チーム全体で技術を高め合っているそうです。

近年はSNSの普及もあり、近隣のアジア諸国に加え、中東やアメリカなど国外の顧客が急増しているのだとか。順風満帆に見える一方で、福田さんは日本の手製靴業界の現状に強い危機感を抱いています。

「実は今、ヨーロッパの靴メーカーが日本の職人の技術力と工賃の安さに目をつけ、製造工程の一部を日本に外注し、最終工程を英国内で行うことで『メイド・イン・イングランド』として販売しようとする動きがあるんです。若手職人からすれば目先の工賃は魅力的かもしれませんが、それでは職人として正しく育たず、日本の靴づくりの文化を絶やしてしまうことになりかねない。だからこそ、私たちは単なる下請けになるのではなく、日本の優れたものづくりを自らの手で世界に発信していく使命があると感じています」

その言葉通り、福田さんは積極的に日本のブランドの商品を着用し、海外から訪れた顧客にも紹介しているそう。この日、腕元には日本らしい物作りが具体化された「ナオヤ ヒダ」の腕時計(この日も手元をエレガントに彩っていました)を着用。

ブランドとしての現状は、ビスポークで約2年待ち、パターンオーダーで1年待ちという状態。それでも、「品質を落としてまで、無理に生産数を拡大することは考えていない」と福田さんはきっぱりと語ります。例えばスニーカーのように自社にノウハウがない分野に関しては、無理に内製するのではなく、自社の木型やパターンを提供しながら信頼できる専門メーカーと協業するのが良いと思っているのだとか。

「オリジナルの作業用エプロンとか、+CLOTHETさんに作っていただけたらいいな、と思いますね(笑)。チームの一体感も高まりそうです。将来的にはお互いの良さを活かして一緒に物づくりができると良いですね」

そう語る福田さんの瞳には、ただ靴をつくるだけでなく、仲間とともに次世代へと続く環境を整えていく未来への明るいビジョンが映っています。徹底したこだわりと、世界を見据えた確かな足取り。「最高の普通の靴」を追い求める福田洋平の歩みは、これからも揺るぎなく続いていくことでしょう。

福田洋平(ふくだ ようへい)​
1980年、富山県生まれ。高校卒業後渡英、語学学校を経て靴専門の職業訓練校トレシャムインスティテュートに入学。在学中からジョン・ロブ・パリ、エドワード グリーン、チャーチ、ジョージ・コックスで研修を受け、ジョン・ロブ・ロンドンのシューメーカー、イアン・ウッドの薫陶を受ける。卒業後はジョージ・クレバリーでリペア、エドワード グリーンでボトムメイキング(底付け)のアウトワーカーを務める。帰国後の2008年に、「ヨウヘイ フクダ」を創業した。
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Photos: Tohru Yuasa

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