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私たちがオンラインで買い物をする上で、パンツ選びというのはなかなか難しいもの。サイズ選びにはじまり、裾の長さや仕上げ方法など、さまざまなハードルが待ち構えています。その結果、欲しいデザインの一本を見つけても、購入に二の足を踏んでしまったり、届いてから後悔したという経験は誰にでも一度はあるはずです。
今回はそんなお悩みを解消すべく、+CLOTHETのトラウザーを監修するテーラー・五十嵐徹氏をインタビュー。また、裾の仕上げや、春や夏のクールビズスタイルにおすすめのシルエットや素材など、パンツ選びにまつわる様々な疑問をぶつけてみました。
ビスポークハウス「IGARASHI TROUSERS」を営み、パンツに並々ならぬこだわりと深い造詣を持つ五十嵐さんだからこそ導き出せる“最適解”の数々は、今後のパンツ選びにおいて良き指標となるはずです。
Photography:Yosuke Ejima Interview:+CLOTHET Edit:K-suke Matsuda(RECKLESS)
パンツを選ぶ際に、フィッティングの一番の肝になるのはじつは「ヒップ」なんですよ。ウエストで合わせる方が多いと思うのですが、正直なところウエストが大きいのであれば比較的簡単に詰めて調整することができます。
これがヒップの場合、ウエストで合わせてしまって小さかったという場合に、出そうとするとパンツに縫い目の跡が残ってしまうんです。ジャケットでいうところの胸回りがしっかり合っていると美しく見えるというのと同じように、パンツはヒップでサイズを合わせるというのがセオリーなんですよね。
たとえば、パンツの型紙を作る時にも、すべての数値の計算はヒップをベースに行っています。また、日本人の多くは、ウエストで合わせるとヒップやもも周りがタイトになってしまう体型の方が多いです。
+CLOTHETのECでは、ヌード寸法(裸で身体を測った時の数値)ではなく、仕上がり寸法(実際の製品の数値)で表記されていますよね。基本的にはまっすぐ立った状態で、身体の中で一番ヒップが出ている部分を測定すれば良いのですが、主流になりつつあるプリーツ入りのパンツは穿いた状態での測定が難しいかもしれません。
厳密に言えば、腰の付き方やお尻の形で変わるのですが、ヌード寸法で測ったヒップに、プリーツがないパンツの場合は「6cm」、1プリーツの場合は「9cm」、2プリーツの場合は「12cm」をプラスした数値を、仕上がり寸法の基準にしてみてください。僕の経験上、この数値をベースにすれば、よほど特殊な体型やシルエットでない限り、綺麗にパンツを穿くことができるはずです。
とりわけ僕が監修している+CLOTHETのパンツには、ウエストがイージー仕様になっているものも多いので、ウエストの数値に神経質にならずヒップで合わせやすいかもしれませんね。
セットアップの場合はスーツとは違い、その方のやりたいスタイルに合わせて好きなサイズを選ぶことができるのが一番の利点だと思います。たとえば、イタリア系のスーツブランドですと、ジャケットに対してパンツが小さく設計されていることも多いんですよ。ですが、スーツですと上下共に同じサイズを選ばなければいけないので、ウエストを出して調整をしなければいけないですよね。
セットアップであれば、そういった悩みもなくジャケットとパンツを好みのサイズで選ぶことができます。たとえば、あえて上がジャストサイズで、パンツがワイドという合わせでも良いですし、上も下もタイトにまとめるということもできます。選択の自由があるというのも楽しみ方の一つですね。
一般的に一番フォーマルなのはシングル仕上げだと言われています。ただ、ここ最近ではその流れも若干変わってきていまして、フォーマルなものでもダブルになっていたりすることも多いですよね。
個人的には、レディメイド(既成)のパンツを購入する時には合わせる靴によって裾の仕上げを選ぶのがおすすめです。たとえば、レザーのローファーやオックスフォードシューズ(紐付きの短靴)など、綺麗な革靴に合わせるのであればダブルで、スニーカーに合わせることが多いのであればシングルが良いと思います。
スニーカーは基本的に、外羽根式のレザーシューズよりも甲高でボリューミーなものが多いんです。たとえば、それがコンバースのオールスターのようなものであったとしても、ソールがラバーの厚底に対してダブルの裾がとても重く見えてしまいます。
ローファー、ノークッション、シングル仕上げ
あとは、ダブルの場合はロールアップができないんですよね。シングルであれば、折り曲げてカジュアルダウンさせることもできるので、スニーカーのデザインに対してコーディネートの幅を広げることができるんです。
トレンドは常に変動していますが、4.5cmがベストだと思っています。一時期は5cm以上の太めが流行っていたのですが、春夏の時期であれば、太過ぎない方が軽やかに見えるので良いと思います。余談ですが、感度の高い方は少しずつ幅を細くしている傾向があります。今後は3.5〜4cmくらいがトレンドになるかもしれませんね。
ローファー、ノークション、ダブル仕上げ4.5cm幅
僕は圧倒的にダブルにするのが好きです。デニムなどカジュアルなパンツの場合はロールアップをしたいので、タタキ仕上げ(パンツの表に縫い目が見える仕様)にしています。パンツの丈に関しては、一般的にはどこへ行っても恥ずかしくない丈という意味で、ローファーの時はジャストクッション、レースアップの内羽根式ドレスシューズの時はハーフクッション、モンクストラップや外羽根式のレザーシューズの時はワンクッションを設けるのが良いとされていますが、僕は短めが好きなので、なんでもノークッション(裾が靴の甲に当たらない程度の長さ)にしています(笑)。
春夏シーズンはトップスに合わせるアイテムがどんどん軽快になってきますので、ノープリーツの細いパンツを選んでしまうと少し物足りないコーディネートになってしまいます。だからこそ、パンツにボリュームを加えるという意味でもプリーツの入ったパンツをぜひおすすめしたいですね。
少しずつワイドパンツがトレンドになってきてはいますが、今回のピッティ・ウォモ(年に二度イタリアで開催される、世界最大規模のメンズファッション展示会)を見たり、これからのことを考えると、すごく太いパンツというのは流行らないと思います。
なぜかと言えば、ワイドパンツにする時には股上を浅くしなければいけないんですけど、身長の高くない日本人が股上の浅いワイドパンツを履くと、見た目がピエロのようになってしまうんですよ。それよりも、プリーツが入っていてゆとりがあり、裾に対してテーパードが利いてすっきりとしている形の方が日本人には似合うと思います。
ウール混のシアサッカーというのが特殊で、ほとんど取り扱っている会社さんがないんですよ。しかも、定番のストライプだけではなく、ネイビーやベージュ単色のシアサッカーがあるというのが良いですよね。春夏にふさわしい涼しい素材ですし、ウール混なのでストレッチが利いているのにパンツの膝が抜けにくいというところも魅力だと思います。
ネイビーの単色は畝があるのにかなりドレッシーなスーツに見えますし、ベージュもチノっぽいカラーリングでTシャツとの相性も良さそうです。クールビズのオフィスカジュアルでも使えますし、本当に良い素材ですよね。セットアップではもちろん、パンツ単体でもこれからの時期にかなり活躍すると思うので、シルエットと生地の魅力を楽しんでいただきたいです。
「パンツを洗濯機で洗う際の注意点」や「素材別の洗剤の選び方」「出張の際におすすめのシワになりにくい吊り方」などお手入れ方法をQ&A方式でご紹介。
少しコツが要る「アウトプリーツのアイロンのあて方」や「アイロンをかけたトラウザーの保管方法」など、初心者から上級者まで役立つテクニックをご紹介。
なぜ根強い人気を誇っている「イージートラウザー」に手を加える必要があったのか。テーラー・五十嵐氏の揺るぎない信念と、飽くなき探究心とは・・・
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