My T-shirts, My Life
-Tシャツのある日常- vol.11

Tシャツには不思議な魅力があります。シンプル極まりないけれど、Tシャツにかける愛情やこだわりは人それぞれ。連載「Tシャツのある日常」では、さまざまな分野の第一線で活躍する人たちのライフスタイルを通して、Tシャツにまつわるエピソードや仕事への思いを聞いていきます。

江口大介氏

“時代”を預かり、次世代へとつなぐヴィンテージショップ店主
江口洋品店・江口時計店 代表・江口大介|No.11

独自に買い付けたヴィンテージウォッチとアパレル&グッズのセレクトショップとして世界的な人気を誇る、東京は渋谷区松濤の「ECW SHOTO 江口洋品店・江口時計店」。その代表を務める江口大介さんは、時計業界においては意外と珍しい、ファッション、インテリア、クルマなど幅広い分野に精通するオールマイティな“趣味人”です。とかく資産価値や投機性で語られがちなヴィンテージウォッチを、ファッションやジュエリーとリンクした独自の価値観と高い審美眼で厳選し、提案している江口さん。そのスタイルがいかにして構築されたのかを伺うべく、「ECW SHOTO 江口洋品店・江口時計店」を訪ねました。

江口大介氏・ECW SHOTO 江口洋品店・江口時計店にて

数あるヴィンテージウォッチショップのなかでも、そのラインナップの希少性、ファッション性、信頼性などにおいて非常に高い評価と支持を集めている渋谷区松濤の「ECW SHOTO 江口洋品店・江口時計店」。その最大の特徴はなんといっても、店主である江口大介さんの審美眼に叶った時計とファッションアイテムが、見事に調和し、共鳴するかのような商品提案と新たな価値創造にあります。

時計愛好家は時計だけ、服飾愛好家はファッションだけに近視眼的に注力し、これまで完全に分断されていた両者の垣根。その境界を見事に取り払うような複眼的思考、そして時代を超越するヴィンテージに宿る、本質的な不変の“価値”を可視化する商品ラインアップによって、単なる時計やファッションアイテムの販売にとどまらない、モダンで洗練された独自のスタイルを提案する───それがこの「ECW SHOTO 江口洋品店・江口時計店」であり、江口さんなのです。

江口大介氏・ECW SHOTO 江口洋品店・江口時計店にて ECW SHOTO 江口洋品店・江口時計店 江口大介氏・江口大介氏・ECW SHOTO 江口洋品店・江口時計店にて

「実は僕のキャリアのスタートは、シルバージュエリーの職人なんですよ。10代でジュエリーというものを意識したころに初めて触れたのがゴローズで、自分もそういうものをつくってみたいと強く思ったのが一番。就職してからジュエリー製作に没頭して、毎日十数時間も作業台に向き合い、ひたすら黙々と彫金し続けるという日々を送っていました。

それでも好きでやっていたことですし、二十歳そこそこでかなりの収入を得ていたのでなにも問題はなかったんです。ただ作業ばかりしていると、どうしてもお客さんの顔が見えないんですよ。そういう環境で自分が感じたのは、やっぱり人と話したいな、ということ。ものづくりって面白いけど、喜んでくださるお客様の笑顔を見たり、お話をできる方がよっぽど楽しいよなって」

「人と話す仕事をしたい」と思いはじめてから約3年、江口さんは独立し、自らの会社を立ち上げました。

「何か計画があったわけではなく、ひたすらフリーマーケットに行ったり、リサイクルショップのような場所を巡回して売れそうなものを買い集め、当時サービスを開始したばかりのインターネットオークションで販売するということを繰り返していました。誰かが道端に投棄していた舵輪型の置き時計を拾って出品したら、8000円で落札されたということもありました。そこで、誰かにとっては不用のゴミも、他の誰かにとってはお宝かもしれない───仕入れのルートさえあれば、安く手に入れて高く売ることができるんだということを知りました」

10年ほど古着メインのビジネスを続けた結果、全国の質屋さんからさまざまな情報が集まるくらいのネットワークを構築することに成功。洋服に関する膨大な知識を蓄え、相当に目利きも磨かれた江口さんですが、まだ時計を本格的に扱おうという気にはなれなかったのだそう。それは、古着とヴィンテージウォッチにある決定的な違いが原因でした。

江口大介氏・ファッションアクセサリー 江口大介氏・ビンテージウォッチとシルバーアクセサリー

「ヴィンテージアイテムを扱うようになって20年。でも真剣にヴィンテージの時計に取り組もうと吉祥寺のお店をオープンしたのは結構遅く、いまから8年ほど前なんですよ。なぜなら、洋服を深く知るために何百、何千という古着を手に入れても資本はそれほど掛かりませんが、時計の場合はそうはいきませんから……。時計というのは仕入れるのにも、しっかりと修理できる職人さんたちがいる環境づくりにも、大きな資本が必要です。だから絶対ひとりじゃできないし、もっと大人になってから、企業として成熟してから取り組もうと決めていたんです」

店主でありバイヤーであり、自ら時計の解体や組み立てをすることもできる江口さんだが、吉祥寺時代からさらにパワーアップしたこの「ECW SHOTO 江口洋品店・江口時計店」では仕入れや真贋鑑定に注力。メンテナンス業務は専任の時計技師に任せているのだとか。

「僕は元々職人でしたから、時計の機械をいじるのは大得意。やると決めたらすぐに時計用の工具類はすべて購入し、実機をバラしてみたり、熟練の職人さんに組み立て工程を見せていただきに行ったりして、ノウハウを学んでいきました。洋服であれば表から見て、触ればそれで本物か偽物か、製造年代なども知ることができるのですが、時計の場合は裏蓋を開けて、機械をバラシてみなければ分からないことが多い。ただそれをしたら元に戻すために組み直すという作業が必須なので、最初は何度も失敗してダメにしてしまった時計も多々ありましたね。

それもこれも、いいと思うモノ、みんなが欲しがるモノをただ売るのではなく、その製品の中身や背景についてもお客様にきちんとお伝えしたうえで、お譲りできるようなお店にしたいと考えていたからなんです。その思いは、スタッフもしっかり受け継いでくれていると思います」

ビンテージウォッチ・カルティエタンク等

商談などお客様対応が多い業務のドレスコードとして、また”日本のバウハウス”を意識したという店舗の内装にもフィットする装いとして、クラシカルなエレガントカジュアルに身を包むことが多いという江口さん。この日は親交のあるファッションデザイナー・瀬川誠人さんが手掛けるアフターアワーズのゆったりとしたネイビーのセットアップに、+CLOTHETの「Big T-shirt」を合わせたクリーンかつリラックスしたスタイル。シルクスカーフやシルバージュエリーによって江口さんらしい個性と華やかさを演出しているのが印象的です。腕時計のベルトをセットアップのネイビーに揃えた、さりげないテクニックも見逃せません。

江口大介氏がスビンプラチナムビッグTシャツを着用した様子 江口大介氏がスビンプラチナムビッグTシャツを着用した様子 江口大介氏がスビンプラチナムビッグTシャツを着用した様子

「店舗はもちろん、最近は講演など人前に出る機会が多いのですが、僕は出張などに出かける際に、たくさんの荷物をもつのが好きじゃない。だからきちんと見えつつ快適な着心地で、シワにもなりづらいこのセットアップのような服が重宝するんです。インナーにも強撚素材のタートルネックやハイゲージの上品なTシャツを合わせることが多いのですが、この『Big T-shirt』のように襟ぐりがキチッと詰まった上品な面構えが僕の好み。しっとりとした肌触りも抜群で、高級感のあるテクスチャーが“オン”にふさわしい1枚だと思います」

テーラードに合う最高のTシャツを目指して開発された、+CLOTHETのTシャツ。その本質をとらえ評価してくれた江口さんは、このTシャツを見てスイスの高級シャツ地メーカーであるアルモ社の生地を思い出したといいます。アルモ社といえば、エルメスやシャルベといった超一流ブランドやテーラーたちが認める、テキスタイルメーカーの最高峰として知られる存在。

「ヴィンテージのエルメスシャツを“掘っている”と、同じエルメスでも明らかに質が良くムードのいい生地の個体が出てくるんです。詳しく調べてみると、それらがシャルベやルイ・ヴィトンなどにも採用されているアルモ社によるものだとわかりました。それからは、アルモ社の生地自体を掘ってみたりもしましたね(笑)。それくらい生地というのは重要で、いい生地を使った製品は触るだけ、吊るしてあるのを見るだけでわかるくらいの”違い”を生み出すものなんです」

江口大介氏・EWC江口洋品店の様子

「僕は『対面で人と話したい』という思いから、シルバージュエリー職人の職を辞し独立しました。でも結局は、10年ぐらいずっとオンラインで販売する仕事をしていたわけです。要するにジュエリーをつくっているときも古着を売っているときも、お客さんが見えていませんでした。でもその反動によるものなのかは分かりませんが、この時計はどういう魅力があって、どんな使い方をするべきなのかなど、お客様と直接お話しできるスペースが必要だという思いを、強くしています。そういう意味でこのお店は、ネットオークション時代があってこそなのかもしれませんね(笑)」

​江口大介氏​

そんな江口さんだからこそ、オンラインやeコマースの発展を歓迎しながらも、作り手やモノに愛情のある人から購入できる実店舗の価値と存在意義を強く感じているのかもしれません。

「何を買うかはもちろんのこと、誰から買うかということが、より大切になっている時代だと感じています。自分がどうやってその“ファン”になったのか───モノより思い出じゃないですけれど、『あのとき買ったんだよな』『あの人にもらったな』とか……。今日僕が身につけているのも、ほとんどが友人たちがつくったものばかりですし。捨てられないモノが家に山ほどあるのは、そのせいなんですけどね(笑)。

「ものづくりって難しい」とも語る、江口さん。だが難しいことだからこそ、値段や希少性といったこと以外に伝えられることがないのであれば、モノなんてつくらない方がいいのだといいます。

「モノを売るということは、買ってくれた人の人生のターニングポイントになることだってある。だから僕は、オンラインのプラットフォームも展開しつつ、効率のよくない実店舗をやっている。やっぱりお客様が気に入った時計を購入してお帰りになる際の、嬉しそうな笑顔を見るのがたまらないんですよ。

とはいえ、皆さんに実店舗をやるべきだなんて絶対言わないです。大変なのは事実ですし、効率性が低いのは確かですから。でも効率よりも大事なものがあるんじゃない?っていうことを伝えるために、僕らのようなお店が必要なんだと思うんです。非効率のなかにこそ、人はこだわりを感じられる。だから僕は、“非効率を自分たちなりに効率化する”ということを常に考えているんです」

ECW SHOTO 江口洋品店・江口時計店​

最後に江口さんは、流行とは無関係にヴィンテージがもっている、真の魅力を教えてくれました。

「誰かが使ったものなんてイヤだっていう人も、たくさんいらっしゃると思います。でもこの業界の先輩から教えられたのは、ヴィンテージを扱う僕たちは、“時代”を預かっているんだよ、と。誰かが愛情をもって使っていたものをキレイにし、直しながら、その“時代”を一時的に預かり次の世代に受け継いでいく───古いもの、いいものを長く大切に使うことを学べるというのも、すごく素敵なことだと思いますね。時を経て受け継がれている本物だけが、決して損なわれることのない本当の価値をもっているんです」

江口大介氏​

​江口大介​
1980年、東京・台東区生まれ。シルバージュエリー職人、ヴィンテージハンターとして活動後、2017年、洋服とヴィンテージ時計を扱う「江口洋品店・江口時計店」を東京・吉祥寺にオープン。24年2月に現在の渋谷区松濤へと移転し、時計修理工房を併設する「ECW SHOTO 江口洋品店・江口時計店」としてリスタート。時計のみならず、クルマやインテリア、飲食などにも精通し、時計と洋服という、一見かけ離れた存在である両者を統一された空間に並べ、お互いを高め合うかのような独自の価値を提供している。
江口洋品店・江口時計店公式サイト
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Photos: Tohru Yuasa


約150年、生地の企画・製造・販売に携わってきた私たちだからこそ、自分たちが認めた生地を直接消費者に届け、その価値を知ってもらうことを第一に考えて開発したこだわりの商品です。

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約150年以上続く生地サプライヤーであるからこそ成し得ることができる、国内外からの原料調達から生地開発、製造と洋服が作られるすべての工程を一貫で行っています。そのため、クオリティ、価格において「商品の最適化」の実現を目指しています。

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