+CLOTHET史上、最高のニット


ここ数年、「テーラードTシャツ」の着心地のよさの虜になったファンが、次の一枚として選んでいるのが半袖ニットです。今シーズンはTシャツで圧倒的に支持されている「スビンプラチナム」原料を使ったニットコレクションが初登場。糸の開発から編みに至るまで、すべての生産工程を見直すことで、夏の新定番に進化したニットウェアの魅力に迫ります。





カジュアルウェアにもテーラーの型紙を


+CLOTHETの服づくりは、常に素材ありきの発想から。そのときどきに最高と思える素材との出合いが、これまでにないものを生み出すイマジネーションをかき立てます。そんな+CLOTHETが2018年のデビューの際、力を入れていたのがドレスシャツでした。ビジネススタイルのカジュアル化が進み、職種によってはネクタイなしでも許される風潮が広まっていたものの、それでもシャツは不可欠とされていた時期です。


当時の主力商品のひとつに、イタリアのアルビニ社(※1)の生地を使ったドレスシャツがあります。+CLOTHETのニットウェアは、そのシャツ地の糸を使って商品化したのが最初。その際、徹底して考え抜いたのが、テーラー仕立てのシャツやジャケットとの相性でした。
※1)1876年にイタリアのベルガモ近郊で創業。傘下に英トーマスメイソン社やDJA(デイビッドジョンアンダーソン)社を抱える世界最高峰の老舗シャツ生地ブランド。


ロシア民芸品のマトリョーシカ人形のように、中に着るものと外に着るものが同じ形状なら、重ね着してもきれいにフィットするのではないか。当時、チーム内で議論していたそんな仮説が、のちの+CLOTHETを特徴づける、あるひらめきをもたらします。それがカジュアルなTシャツやニットウェアにも、ドレスクロージングのパターンメイキングの技法を応用するアイデアでした。


スポーツウェアに由来するこれらのアイテムは、素材自体に伸縮性があるため、平面的なつくりが一般的で、型紙(パターン)を使うことほぼありません。しかも、それをもとに体に沿ったかたちに仕上げるには、手間も時間もかかるうえ、コストにも影響してしまいます。



襟元や袖口、裾のリブは、細く仕上げて上品な印象に。パターンだけでなく、デザイン面でもジャケットとの相性を考慮。写真はスビンプラチナムを使用したニットTシャツ

 

しかし、+CLOTHETを運営する繊維専門商社は、長年、素材を通してトレンドの先を読む力を磨いてきたプロフェッショナル集団。近い将来、ドレスクロージングとカジュアルの境界線がますます溶け合い、ドレスアイテムのカジュアル化だけでなく、カジュアルアイテムのドレス化が求められる時代がやって来るという確信がありました。


従来のニットウェアの不満を解消


+CLOTHETがニットづくりでまず取り組んだのは、シャツの上に着てもごわつかない、すっきりとしたシルエットの実現でした。型紙は、シャツのパターンをベースに、着用時の肩や腕周りの動きを見直してアレンジしましたが、ニットウェアは素材の特性上、布帛のように型紙通りにカットするわけではなく、いかにそれに近いものに編み上げるかがゴールとなります。


そこで、人体のラインに沿って編む「成型編み」で、首周りや袖の付け根といったカーブがある部分の編み目の目数を減らす「減らし目」という技法を随所に採用。なかでも、+CLOTHETが用いる「目立て内減らし(※2)」は、編み目の接続部分がきれいに仕上がるのが特徴です。ただ、減らす目数によってシルエットや着心地がまったく違うものになってしまうため、協力工場と何度もやりとりしながら、ひと編み単位での調整と確認が必要でした。
※2)編み端より内側で減らす方法。通常の外減らしに比べて手間がかかる分、工賃も上がるが、より上品で美しい仕上がりになる。


そうまでして万全を期したのは、自分たちが素材のエキスパートとしてこれまであらゆるニット製品を経験するなかで、不満に感じていた部分を少しでも払拭したかったため。それには、日常生活のなかでの取り扱いやすいことも絶対に外せない条件でした。



目立てをすることで波打ちをなくし、すっきりと美しい仕上がりに。減らし目をした部分には、編み目の目移しによってできた「ファッションマーク」と呼ばれる印ができるのが特徴。


ハイゲージ編みのコットンニットというと、上質で繊細な素材感がエレガントな雰囲気を醸し出す一方、メインテナンスが面倒で型くずれしやすい、というイメージがつきまといます。しかし、+CLOTHETでは工場からサンプル(試作品)が届くたびに、着用と洗濯による変化をチェックする期間を長めに設定。本来、ニットウェアは、おしゃれ着用洗剤で手洗い、平干しするのが基本ですが、よりハードな扱い方でも耐えられるかを厳しく検証しました。


そこで納得できなければ、編み地や度目(※3)の詰め方、糸本数取りなどを調整のうえ、サンプルをつくり直して再確認。こうしたブラッシュアップを重ねた結果、短期間で寿命を迎えることのないニットウェアが完成しました。
※3)ニットのループの目の大きさのこと。編み目の密度。



スビンプラチナムのニットポロシャツは、天竺編みの身頃に対して、台襟を「ミラノリブ」でしっかりと立たせ、襟羽根は「総針」と呼ばれるゴム編みで立体的な表情に。100%コットン製なので、まったく縮まないことはありませんが、洗濯しても劣化しにくい襟に仕上げています。


待望の「スビンプラチナムニット」が誕生


その後、時代の急速な変化もあり、ビジネス領域で多様なスタイルが認められるようになると、シャツとの重ね着を前提にしたつくりから、Tシャツやカットソーとの組み合わせを想定した型紙に変更。Tシャツ同様に気軽に着られて、品よく見えることから、ドレスシャツ代わりのジャケットのインナーとして徐々に人気に火がつき始めます。


2020年に、素材を世界の超長綿のなかでも最高峰とされる「スビンコットン」に替え、今シーズンはTシャツで大ヒットを記録した「スビンプラチナム」を使った初めてのニットコレクションが登場。糸本来の美しさからくるシルクのような光沢や、しっとりとした風合い、ソフトでしなやかな肌触りなど、これまで以上に魅力的なコレクションに仕上がりました。



ニットポロシャツの襟は、クラシックなドレスシャツのつくりを踏襲し、襟越をやや高めに設定。台襟ボタンと第1ボタンの距離をミリ単位で検証し、前立ての裏に接着芯を貼って、ボタンを開けたときに襟のロールが美しく出るように工夫を凝らしています。


CLOTHETが支持される理由のひとつは、ベーシックなワードローブが中心のため、流行に左右されずに長く着続けられること。とはいえ、素材だけではなく、デザインも少しずつアップデートしているのが特徴で、今回の「スビンプラチナムニット」コレクションでは、リブの仕様や袖丈の長さの変更とともに、「テーラードTシャツ」とサイズ感が同じくなるように、シルエットなどに部分的な修整を加えました。


ここで注目したいのは、これらの修整を行うにあたって、目立て内減らしの箇所を大幅に増やした点。通常、ニットウェアでこの技法が使われるのは、襟端や後ろ肩、アームホール程度ですが、+CLOTHETでは袖下や身頃の脇といった箇所にもこれを取り入れ、立体的なつくりをさらに突き詰めています。


こうした細部への類を見ないこだわりは、素材の素晴らしさを存分に味わってもらいたいから。ごまかしのきかないシンプルなデザインだからこそ、感性を研ぎ澄ませ、普通なら見逃してしまいそうな部分にまで目を配っては、素材の声に耳を傾けます。目指すのは、時代性を大切にしながらも、普遍的な美しさを兼ね備えた服。+CLOTHETの服づくりは、“永遠に完成しない”進化の連続といえるのです。



カジュアルな印象の強いサーマルを、一つひとつの凹凸を小さくすることでエレガントな印象に仕上げたミニサーマルTシャツ。ドレッシーなウールスラックスからカジュアルなジーンズまで合わせられる汎用性の高さも魅力。



Photos: Tohru Yuasa